「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」感想

「DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る」を見てきた。以下ちょっとしたネタバレあり。
で、まあ、内容は、うーん、これは……と首を捻ってしまう作品ではあった。始めに断っておくと、僕は第一作目の「DOCUMENTARY of AKB48 to be continued 10年後、少女たちは今の自分に何を思うのだろう? 」には肯定的な立場だ。あの作品の素晴らしいところは、AKB48という虚構の中で必死にもがこうとする少女たちの実像をドキュメンタリーの形で切り取ることによって、映画というもう一つの虚構に仕立て上げたところだと思っている。加えて、劇場やテレビという場で活躍する彼女らがある種「映画的な」撮られ方をするだけでまた別の輝きを見せてくれたところも評価出来るポイントである。(例えば冒頭の食事シーン)つまるところそこには十分に映画化する理由や必然があった。「今」を捉えてそこから夢を語ろうとする彼女らはとても美しかった。
しかし今回の第二作目はそうした製作者側の意図というものは極限まで薄められ、基本的にはただのドキュメンタリー、いやもっと言ってしまえばメイキング映像にすぎないところで終わっている。そうしたメイキング映像として見ると、西武ドームライブにしろ総選挙にしろ基本的に大人が仕立て上げた舞台で少女たちが頑張るという形式であって(いや、それはそれで個々のメンバーにフォーカスして見る限りでは非常に面白いという事も付け加えておく)映画として2時間集中して見るには少々退屈だった。「2時間でわかる2011年のAKB48」としてテレビで放送すれば、今はtwitterや何やらをもっての実況が出来る時代なわけで、そうしたやり方と共に楽しめたとは思えるけれども逆に言えばその域を超えてはいない。
更に構成についての難点で言えば、前作はインタビューとドキュメンタリー映像によって2010年のAKBを追いながら同時にメンバー個々から見た、AKB48のこれまでの道のりを語らせていたが、本編では基本的に2011年に起こった事についてのみしか語られず全体的にかなり間延びした感があった。そもそも総選挙にしろ、じゃんけん大会にしろ定例の行事であるわけで予想を裏切るものではなかったという点も大きいだろう。

良かったところもある。冒頭、被災地に赴いたメンバー達によるラフな格好での一曲目「ヘビーローテーション」のパフォーマンスは、この曲の持つ底抜けにハッピーな感覚がどこだろうと通用するということ、音楽とアイドルの力強さを何よりも雄弁に物語っているシーンだ。あまり良い見方とは言えないかもしれないが、この映画内における、被災地でのライブやファンとコミュニケートするシーンはどこも彼女らの魅力を抜群に引き出している。
それとチーム4のシーンはどれも素晴らしい。キャプテンになってしまった大場さんとキャプテンになりたかった島田の葛藤がテーマとなっていて、そこには大人たちの醜い、しかしながらありふれた悪意とそれに抗おうとする少女たちの姿がドキュメンタリーとして、ありのまま映し出されている。ここは本当に面白かった。そしてグッとくるものがあった。無論カメラが入っている時点で「ありのまま」というのは難しいという事はわかっている。しかし、そうした前提を打ち破るような生々しさと力強さを彼女らは持っていたということだ。このシークエンスを飾るラスト、その葛藤がぶつかり合いながらも解消されようとする場面はすなわちこの映画のピークでもある。ピークなのだが、一つ不満を爆発させたいところがあって、それは泣きながら喋っているという所で少し声が聞き取りにくくなっていることに対しての配慮だろうか、説明的な字幕が入っているのである。本当に興醒めというか、ぐしゃぐしゃになりながら、傍から見れば何を言っているかわからないかもしれないが本人たちはしっかりとわかりあっているという点が重要なのであって言っていること自体は字幕を付けてわざわざ説明されるような事ではない。この字幕問題は随所で(それも、当然ながら感極まってしまうような重要な場面で)モチベーションを著しく下げてくれる。というかこうした説明過多な点はAKB全体の嫌な所でもあるんだけれど……まあそれは置いておこう。チーム4の場面でもう一つ言いたいことは永尾まりやさんがとても可愛くてアップになったりするともっと可愛くてスゴク良かったことだ。この映画の質を底上げしていたのは間違いないだろう。
それとここまで書いてて思ったのは、いわゆる大人たちの予定調和を上回ってしまった事例が去年のAKB48にとっては2つだけあって一つは東日本大震災、もう一つは大場さんの事件であったのではないだろうか。ダメージを受けた日本とチーム4の苦難と再生への意志をオーバーラップさせて、メインで描いて欲しかった。
まとめると、ファンなら見てもいいけどどうせまたテレビでやるだろうしそれまで待ってもいいという程度の出来だけどこうして感想を書いてると良かったところを集中して思い出すことが出来るので個人的にはなかなか満足だった。ファン以外の人は観なくてもいいです。